YOMIMONO 読み物 小説、エッセイ、著者インタビュー、等々。新潮文庫nexが贈る特別コンテンツ。
インタビューの最近のブログ記事
(1)お互いの第一印象をお聞かせください!
ミレディア(以下・ミア):物音だけ聞こえてたときは、「………なにか、いる…」っていう…。でも私、墓掘りが趣味ですし、人見知りの幽霊ならむしろ仲良くなれると思って…。会ったときは、……ひどく悲しい気持ちでした。
道化師:……。……さびしげで、どこかもろくて目が離せない、……あと…やっと見つけたと…(*取材者註:それきり黙る)。
2)ミレディアさんは最初道化師さんを女の子と勘違いされていましたが(あっ道化師さんが取材者を睨んでますね…)、男の子だなあと意識した瞬間はありますか。
ミア:抱っこされて持ち歩かれるのは嫌いらしい、というところ。少しは移動が楽かなと思って…。
子供扱いと感じて嫌がるのかなとも考えましたが、膝枕だとじっとしているので…。?…男の子は難しいです。
(3)道化師さんはミレディアさんの香りに強く惹きつけられていた印象ですが(また道化師さんが取材者を睨んでますね…)、ミレディアさんは何か特別な調香を?
ミア:いえ? 何も。だいたいギィは「香水を俺に移すな、帰れ!!」ってよくきれいな女の人をふってるし、特に戦場なら「居場所がばれんだろ馬鹿ミア!」って首をしめられてるはず。…………でも…(でもアキが前に「花のにおいがするね」って奇妙なことをいっていたわ…)。……。
(4)ミレディアさんが途中、道化師さんの木枷をノコギリでゴリゴリやったり、道化の面を泡だらけにされていましたが、「これならイケたかもな!」と他に挑戦したかった方法はありますか。
ミア:ギィ直伝、渾身の居合抜き。難点は実戦経験ゼロの私だとたぶん中身も死んでしまうところ(*道化師、ミレディアの背後でおののく)。
それか体を小さくする秘薬を開発・投与(そちらの世界のアリスのケーキなどが非常に参考に)。空豆サイズになれば木枷もゆるみ、道化師セットが脱げるのではと…。呪いがとけなくても、手のひらサイズの彼は大変かわいいと思います(*道化師、憤然とする)。その後成長薬を投与…でも間違えれば私より年上になってしまうかもしれないから…(*道化師が興味を持つそぶりをする)。難点は投与方法で…、面で飲み薬はだめ、注射針も通らない服…。やっぱり座薬しか…(*道化師去る)。
(5)最後に、読者の皆さまへのメッセージをお願いします!
ミア:また…いつの日かお目にかかれますように。皆様にも…。
…鎖と木ぐつの…あの子にも…。
道化師:…。この先、ミア…さんと再会する日がきても、…僕が道化師だったとは言わないでほしいと思います。それだけは…。
【作品関連】
(1)『レアリア』2巻刊行からもうすぐ1年。どんな日々を送ってきましたか。
雪乃:いいこと半分苦しいこと半分、人並みだと思います…(笑)。
何も書かない期間を1ヶ月つくって読書に当ててみた時があったのですが、よかったです。しおれた菜っ葉みたいだったのが元気になって。意識して錨をおろす時間、というのをようやく考えるようになりました。
(2)「yom yom」2016年夏号寄稿の『レアリア』特別読切の前に、『彩雲国秘抄 骸骨を乞う』角川文庫版に収録する特別篇の書下ろしがありました。それが今回の執筆にあたって、何か気持ちの面でプラスに働いていると感じる部分はありますか。
雪乃:今回は特に何も意識は…別の話なので(苦笑)。
それに限らず、今まで書いてきて、マイナスに働いたものは何もありません。
山をのぼるように、1つ1つが私のプラスです。なので「はい」ですね。
(3)今回の読切は、ミレディアとアリルの出会いの物語でした。これをテーマに選んだ理由は。
雪乃:テーマ!?(笑)を選んだ理由……。えー…いえ、単に当分書く機会がなさそうだったので…。
(4)書いてみていかがでしたか。
雪乃:それはごらんになった読者の皆様に私が聞いてみたいことです。どうだったでしょう。感想をいただけたら、嬉しく思います。
(5)今後読切をやるなら、書いてみたいのは誰のどんなお話ですか。
雪乃:さて…そのときになってみないと。その時々で「これ」と感じた話にはなると思いますが。どんな話も、書く時機を逸したら、そのままずっと私の中で眠る。とても大事で、書きたかったエピソードでも、時を逃すと永遠に書かないまま終わります。不思議とそういうもので。まさに縁ですね。 ですから今はなんとも。「書いてみたい話」を実際書く機会があるかはわからず、書けなかったとき、本当にさみしくなりますから。
(6)『レアリア』は雪乃さんにとって、どんな物語ですか。
雪乃:私の初期の2作品のうちの1つになります。
初期火山のマグマの残り半分てところです。「ベクトルが前作と反対なだけで同じマグマのもう半分」なので、レアリアも誰も彼も好き勝手に(彩雲国とは逆方向に)走っていて、前作同様整然たる話とは遠い(笑)。それでいいとも思っています。前作と同じく、書きたいものを片っ端から、書きたいように書けたらいい。そう思うのも、そんな風に「彼らのその先こそ見たい、今のぜんぶを書いておきたい」と心底思うのも、これが最後かもしれません。初期の私は、ここで一区切りがつくかもしれませんね。…初期ったって、まあずいぶんたってますけど…。レアリアまでは好きにして、自分と彼らのへんなエネルギーに従って書く気でいます。
(7)最後に、読者の皆さまへのメッセージをお願いします。
雪乃:初めてアリルがミレディアと出会ったときのわずかな期間の物語ですが、本編では当分書くことはないかもしれないと感じたエピソードでもあります。
この短編を知らなくてもよし、知って本編を読むとまた少し違う風に読める…かも? しれません。楽しんでもらえることを祈っています。
【夏☆関連】
(1)夏ですね! この夏の予定や、やってみようと思っていることはありますか。
雪乃:花火を見たいですね! 不思議に毎年花火は(行く気がなくても)必ず一回は見る機会や場所に恵まれるので、今年も。
(2)学生さんは夏休みです。夏休みにはどんな思い出がありますか。
雪乃:まだ世界遺産になる前の平泉に友人と2人で行ったとき。何をとちくるったか私が「全部鈍行で行こう」(←むろんそんな距離じゃない)と言いだし、決行。2人して時刻表を間違えるわ、漠然と2時間の待ち時間ができ(ホームは誰の影もなし)、自然豊かな駅で駅員さんにホームから出してもらいサイクリングしてみたり。早朝出発、平泉についたのは夜の9時すぎで夕食もくいっぱぐれ。当時の平泉はその時間ほぼ真っ暗で、私たち2人くらいしか降車しなかったような。でもローカル線の景色はどこまでもどこまでも美しかった。その友人とはその後も旅行しますが、今も2人で笑えるのはその旅ですね。あほな思いつきを真剣に学生のうちにやると本当に忘れ難いです。
(3)夏休みの読書におすすめの本を教えてください。
雪乃:読みたい本を読むのが一番です。自分で宝物になる本を見つけたときが最高の一瞬ですから。私ははりきって分厚い大判の本や長編シリーズを選んでたような。
あとは家族の「勉強は」「ごはんは」などから邪魔されぬ秘技をなんとか各自編み出してください! 寝坊してだらしないと私は毎日怒られてましたが、夜中から明け方しか一気読みできなかったから黙って耐えていた…。
※このインタビューは『yomyom』2016年夏号への『in a blue MOON ―レアリア―』読切寄稿記念として、2016年7月に行われたものです。
『仮面病棟』「天久鷹央(あめくたかお)」シリーズがともに20万部を超えるなど、いま最も勢いのある作家、知念実希人。現役医師の知見を活かした医療ミステリーを続々と発表する著者が、自身の作品について語った。

――『天久鷹央の推理カルテ』は、不可思議な事件の原因が、実は身近な“病気”にあることがわかるメディカル・ミステリーですね。
知念 「天久鷹央」シリーズで起きる怪奇現象は、一見ありえないものですが、解答として提示されるのは全て実際に起こり得る“病気”です。“こんな症例があるのか!”という驚きを作る一方で、病院、医学、病の様々な側面を描き、楽しく勉強できる小説を目指しています。
――探偵役の天久鷹央が非常にユニークなキャラクターです。
知念 この作品は、自分が学生時代に読んで好きだった「シャーロック・ホームズ」や「御手洗潔」といった名探偵のシリーズを受けて書いた、僕にとっての本格ミステリーです。医学的なリアリティを追求しつつ、天才医師である鷹央のキャラクター性や会話のやり取りには、気を配っています。書いていて、楽しいシリーズですね。
――一方、『仮面病棟』は病院で起こる籠城事件を描いた医療サスペンスです。密室と化した病院での息詰まる心理戦に圧倒されます。
知念 『仮面病棟』は、とにかく勢い良く読める小説にしたかった。少ない登場人物。どんどん転がる物語。速くぺージを捲らせたい、一気読みしてもらいたい、との気持ちで、いろいろ工夫を凝らしています。いちばん苦労したのは、病院の構造ですね。文庫には各階のフロア図がついていますが、事件と構造に矛盾がないよう、何度も練り直しました。
――啓文堂文庫大賞で1位に輝くなど、書店員さんに支持されています。
知念 ありがたいことです。刊行から一年後に火が付いたのも、そうした書店員さんの力があったからだと思います。“実際にこんなことが起こりますか?”と聞かれたこともありますが、夜の療養型病院というのは、独特の雰囲気があって、何かが起こりそうなんです。そんな空気を、物語として昇華させています。
――療養型病院といえば、「天久鷹央」の第2巻でも登場していますね。ただ、描かれている雰囲気は、少し違う印象です。
知念 「天久鷹央」シリーズは病院の明るい側面、表の部分を書こうとしています。患者さんと接し、診断を下す医療の現場ですね。他方、『仮面病棟』では病院の裏の顔、医療の負の部分に踏み込んでいます。療養型病院の扱いの違いは、後者で起きる事件が医療問題の深いところと密接に関わっているからです。
――知念作品を初めて読む方には、どちらがオススメでしょうか。
知念 どちらから読んでも楽しめる物語として書いていますし、どちらかを「面白い!」と思っていただけたなら、ぜひもう一方も手に取ってもらいたいですね。医療ミステリーの様々な面白さを、体感してもらえると思います。
(2015年12月 新潮社にて)