YOMIMONO 読み物 小説、エッセイ、著者インタビュー、等々。新潮文庫nexが贈る特別コンテンツ。
2017年8月アーカイブ

「人生最期の時間を十九世紀英国式に暮らしたい」と願う奥様の夢を本気で叶える物語、『オークブリッジ邸の笑わない貴婦人』(太田紫織著、新潮文庫nex)の刊行を記念し、2015年9月に企画された「本格ヴィクトリア朝ドレスプレゼント」。
制作費50万円のこの超豪華企画に、約600件ものご応募をいただきました。
そして厳正なる抽選の結果、ご当選されたのは埼玉県在住の園部摩耶さん(30)。
杉野服飾大学、株式会社エブリスタのご協力のもと、約1年をかけて、園部さんの夢のドレス作りを進めました。
2016年2月、園部さんと共に杉野服飾大学で打ち合わせをスタート。
19世紀後半の英国ヴィクトリア朝時代らしいデザインや色の相談、そして採寸へ。
物語で「奥様」も好む当時のドレスは、首元や袖、裾まわり、そしてスカートの後ろのボリュームを盛りすぎないのがポイントです。
ドレスのカラーは当初、グリーン系も考えましたが、エレガントな薔薇色のドレスに決定! また、一枚のドレスを仕上げるための布の量は大変多く、ずっしりとしたその重さに驚くほどでした。



その後3月、5月、7月、10月と、園部さん共々、制作チームの先生方と綿密な打ち合わせと調整を重ねました。
この日は白のシーチング生地で仮縫いされたドレスを着用しています。裾のドレープの深さや位置を少し変えるだけで、ドレスの表情ががらりと変わるのに驚きました。
実際に使用する布をあてながら、デザインを細かく調整していきました。

そして年末にかけて制作チームの皆様がラストスパート。心を込めて縫い上げてくださり、年を越えた今年1月、夢のドレスがついに完成しました!
園部さんこだわりのボタンが印象的なデザインで、袖や首元に上品にあしらわれたレースが美しいです。
また、小柄な園部さんのために先生方が工夫をされたのは、スカートにかけて縦のラインに目が行くデザイン。柄の入った生地と無地の生地とを組み合わせが、すっきりと見せました。
先生方は「せっかくの特別なドレスです。飾られるだけではもったいないので、着ていただきやすい物にしました」と、上半身とスカート部分を別々に着られるドレスに。
ドレスが崩れない保管方法もレクチャーしたうえで、園部さんに無事贈呈されました。
最後に、制作チームの先生方と記念撮影です。




実は園部さん、ご結婚式を控えられていました。後日、結婚式用に旦那様と撮ったお写真や、式場で飾ってくださった様子のお写真をお送りくださいました。とても素敵です!



最後に、園部さんそして著者の太田さんよりご感想をいただきました。
◆園部摩耶さんより
「体型のここが気になる」、「こんな装飾が欲しい」など、ヴィクトリア朝の婦人方もきっとそんなことを仕立て屋さんと話しながらドレスを作ったのではないでしょうか。
打ち合わせに行く日々は、束の間19世紀の貴婦人になれる、私にとってのオークブリッジ邸とも言える愛おしい時間でした。
大好きが詰まったドレスは一生の宝物です。この度は本当にありがとうございました!
◆太田紫織さんより
物語が現実になったようで、私も感動してしまいました。家事もそうですが、やっぱり衣服も人や人生を作るというか……ドレス一枚で変わる人生があると思うし、実際にあったと思うんです。
園部さんの幸せを担うものであって欲しいと思いますし、やっぱりドレスのボリュームや迫力というか、このドレスなら、人生を左右しても当然だな、と確信させるようなパワーを感じました。
何時間でも眺めていられそうです!
園部さん、そして杉野服飾大学の皆さん、素敵な機会をありがとうございました!
長期にわたる企画にご協力いただいた皆様、この度はありがとうございました。
『オークブリッジ邸の笑わない貴婦人』は2017年9月、完結となる第3巻を刊行。奥様の最後の夢である「舞踏会」を叶えるため、お屋敷の歯車達が駆け回ります。
夢と人生と家族について考える感動の物語、是非皆様お楽しみください。