YOMIMONO 読み物 小説、エッセイ、著者インタビュー、等々。新潮文庫nexが贈る特別コンテンツ。
【作品関連】
(1)『レアリア』2巻刊行からもうすぐ1年。どんな日々を送ってきましたか。
雪乃:いいこと半分苦しいこと半分、人並みだと思います…(笑)。
何も書かない期間を1ヶ月つくって読書に当ててみた時があったのですが、よかったです。しおれた菜っ葉みたいだったのが元気になって。意識して錨をおろす時間、というのをようやく考えるようになりました。
(2)「yom yom」2016年夏号寄稿の『レアリア』特別読切の前に、『彩雲国秘抄 骸骨を乞う』角川文庫版に収録する特別篇の書下ろしがありました。それが今回の執筆にあたって、何か気持ちの面でプラスに働いていると感じる部分はありますか。
雪乃:今回は特に何も意識は…別の話なので(苦笑)。
それに限らず、今まで書いてきて、マイナスに働いたものは何もありません。
山をのぼるように、1つ1つが私のプラスです。なので「はい」ですね。
(3)今回の読切は、ミレディアとアリルの出会いの物語でした。これをテーマに選んだ理由は。
雪乃:テーマ!?(笑)を選んだ理由……。えー…いえ、単に当分書く機会がなさそうだったので…。
(4)書いてみていかがでしたか。
雪乃:それはごらんになった読者の皆様に私が聞いてみたいことです。どうだったでしょう。感想をいただけたら、嬉しく思います。
(5)今後読切をやるなら、書いてみたいのは誰のどんなお話ですか。
雪乃:さて…そのときになってみないと。その時々で「これ」と感じた話にはなると思いますが。どんな話も、書く時機を逸したら、そのままずっと私の中で眠る。とても大事で、書きたかったエピソードでも、時を逃すと永遠に書かないまま終わります。不思議とそういうもので。まさに縁ですね。 ですから今はなんとも。「書いてみたい話」を実際書く機会があるかはわからず、書けなかったとき、本当にさみしくなりますから。
(6)『レアリア』は雪乃さんにとって、どんな物語ですか。
雪乃:私の初期の2作品のうちの1つになります。
初期火山のマグマの残り半分てところです。「ベクトルが前作と反対なだけで同じマグマのもう半分」なので、レアリアも誰も彼も好き勝手に(彩雲国とは逆方向に)走っていて、前作同様整然たる話とは遠い(笑)。それでいいとも思っています。前作と同じく、書きたいものを片っ端から、書きたいように書けたらいい。そう思うのも、そんな風に「彼らのその先こそ見たい、今のぜんぶを書いておきたい」と心底思うのも、これが最後かもしれません。初期の私は、ここで一区切りがつくかもしれませんね。…初期ったって、まあずいぶんたってますけど…。レアリアまでは好きにして、自分と彼らのへんなエネルギーに従って書く気でいます。
(7)最後に、読者の皆さまへのメッセージをお願いします。
雪乃:初めてアリルがミレディアと出会ったときのわずかな期間の物語ですが、本編では当分書くことはないかもしれないと感じたエピソードでもあります。
この短編を知らなくてもよし、知って本編を読むとまた少し違う風に読める…かも? しれません。楽しんでもらえることを祈っています。
【夏☆関連】
(1)夏ですね! この夏の予定や、やってみようと思っていることはありますか。
雪乃:花火を見たいですね! 不思議に毎年花火は(行く気がなくても)必ず一回は見る機会や場所に恵まれるので、今年も。
(2)学生さんは夏休みです。夏休みにはどんな思い出がありますか。
雪乃:まだ世界遺産になる前の平泉に友人と2人で行ったとき。何をとちくるったか私が「全部鈍行で行こう」(←むろんそんな距離じゃない)と言いだし、決行。2人して時刻表を間違えるわ、漠然と2時間の待ち時間ができ(ホームは誰の影もなし)、自然豊かな駅で駅員さんにホームから出してもらいサイクリングしてみたり。早朝出発、平泉についたのは夜の9時すぎで夕食もくいっぱぐれ。当時の平泉はその時間ほぼ真っ暗で、私たち2人くらいしか降車しなかったような。でもローカル線の景色はどこまでもどこまでも美しかった。その友人とはその後も旅行しますが、今も2人で笑えるのはその旅ですね。あほな思いつきを真剣に学生のうちにやると本当に忘れ難いです。
(3)夏休みの読書におすすめの本を教えてください。
雪乃:読みたい本を読むのが一番です。自分で宝物になる本を見つけたときが最高の一瞬ですから。私ははりきって分厚い大判の本や長編シリーズを選んでたような。
あとは家族の「勉強は」「ごはんは」などから邪魔されぬ秘技をなんとか各自編み出してください! 寝坊してだらしないと私は毎日怒られてましたが、夜中から明け方しか一気読みできなかったから黙って耐えていた…。
※このインタビューは『yomyom』2016年夏号への『in a blue MOON ―レアリア―』読切寄稿記念として、2016年7月に行われたものです。